赤穂事件」の真実を求めて、青森から広島まで現地調査を行い古文書や口伝を収集、また『徳川実紀』などの基本資料・文献を精査して、それらを総合して得られた結果を時系列（新たに「年譜」を作成）により検討し矛盾がないものを真実として判定する方法を採用する。その上で、浅野長矩による刃傷発生原因から赤穂浪士の吉良邸討ち入りとその後の処理までを、将軍綱吉と生母桂昌院、朝廷と幕府の関係、城代家老大野九郎兵衛の動向、などに焦点をあて考察。「忠臣蔵」で装われた虚飾を排除して事件の真実を明らかにする。歴史解釈の新しい方法を提示する労作。
　
〔主要目次〕
　　第１章　五代将軍綱吉
　　　　　1.綱吉,五代将軍に就任
　　　　　2.綱吉の政治〕
　　第２章　刃傷事件の発生
　　　　　1.桂昌院と一位問題
　　　　　2.殿中刃傷事件〕
　　第３章　刃傷事件の創痕
　　　　　1.事件に対する幕府の応対
　　　　　2.赤穂城開城に至る経過
　　　　　3.赤穂浅野藩士の動向〕
　　第４章　刃傷事件から赤穂事件へ
　　　　　　1.元禄十四年三月から八月の経緯
　　　　　2.吉良上野介の辞職
　　　　　3.番士･与力･同心の戦闘訓練
　　　　　4.反綱吉派の決起と和解
　　　　　　5.反綱吉派と赤穂事件〕
　　第５章　赤穂事件（第二期）
　　　　　1.第二期の大石隊年表
　　　　　2.赤穂事件第二期の主要事項
　　　　　3.上州磯部村
　　　　　4.赤穂事件へ移行の重要条件〕
　　第６章　赤穂事件の終息−赤穂事件（第三期）−
　　　　　1.赤穂隊の作戦要綱
　　　　　2.第三期の赤穂隊年表
　　　　　3.吉良上野介は斬られていない
　　　　　4.羽州米沢板谷宿 5.弘前津軽藩〕
　　付　章　赤穂事件関係各家系譜図
　　　　　1.赤穂藩浅野家と浅野本家
　　　　　2.吉良家と上杉家
　　　　　3.大垣藩戸田家
　　　　　4.六条有純家
　　　　　5.大石一族〕
　　主な参考資料･文献／後書き


著者紹介 （くろかわ・かずお）
　　1923年 東京生まれ
　　1936年 本所区江東（えひがし）小学校（現･両国小学校）卒業
　　1953年 東京大学工学部電気工学科(旧制)卒業
　　1961年 工学博士(東京大学工学部)
　　1971年 通産省電子技術総合研究所(電子計算機部長)退職
　　1981年 日本シミュレーション学会初代会長（現･名誉会員）
　　1999年 理工系大学の工学部教授を経て現在に至る
　　　
　　　主要著書＝『アナログハイブリッド計算機』(オーム社）、
　　　　　　　　『自動制御論』(コロナ社）、
　　　　　　　　『電子計算機概論』(共著、同）

　　　　　　

　　　　　　紹介記事

　　　　　谷口眞子氏…『日本歴史』第７４８号（2010年9月号）