覚鑁・頼瑜・聖憲・専誉・玄宥と伝わる真言宗の流れは、江戸時代には「新義真言宗」と呼ばれ高野山などの古義真言宗と区別して考えられた。本書は、主として江戸幕府の宗教政策上生まれた新義真言宗の実態を究明する。特に、本末制度や触頭制度など、江戸幕府の支配統制上の諸問題を、寺院史料の精力的な調査に基づいて追究する。

　〔目次〕
第一章＝近世初期の智積院と長谷寺−後継能化選出問題を中心に−／第二章＝近世初期の新義真言宗教団／第三章＝倉田明星院祐長／第四章＝天台宗南光坊天海と真言宗知足院光誉−特に肥前国一宮争論を中心に−／第五章＝近江長浜惣持寺の本末制度／第六章＝武蔵吉見息障院の本末制度／第七章＝武蔵松伏静栖寺の本末制度／第八章＝本末整備と法流相承／第九章＝仙台藩における天台・真言両宗の本末改め／第十章＝真言宗の触頭／第十一章＝新義真言宗江戸四箇寺の確立／第十二章＝江戸幕府の寺社朱印状の再給付手続きについて−武蔵松伏宝珠院の事例を中心に−
〈講演録〉江戸時代の触頭制度について／〈史料紹介〉護国寺快意書状
〈付録〉第一章＝箱根権現別当金剛王院融山について／第二章＝箱根金剛王院の本末制度／第三章＝後北条政権下の関東の本山修験／第四章＝徳川家康と関東修験／第五章＝近世における修験僧の自身引導問題について−特に武蔵の事例を中心に−
索　引(人名／寺社名／地名／史料･文献名／事項)

※『密教学研究』第50号（2018年3月）で紹介されました。（小笠原弘道氏・評）